イチモンジカメノコハムシは前胸と前翅の周辺が板状に広がっていて、半透明な円盤を形成しています。これは、いわば昔の日本の家庭にあった金だらい、あるいは、セルバンテスの『ドン・キホーテ』で、騎士を気取ったドン・キホーテが「兜」として奪い取った床屋の金だらい様のものです。その真ん中にやや扁平な昆虫本体がはまり込んだような形になっているというわけです。自分の世界に籠もってなかなか顔を出さないところも、昆虫界のドン・キホーテと言えるかもしれません。
その円盤は一見ツルツルの表面をしているようですが、拡大してみると、微少な凹点が多数ある、一種のディンプル構造であることがわかります。このような微細な構造は防汚機能を持つことが知られており、甲虫の固い殻の表面や、土中に潜って蛹化する蛾のサナギの表面などに見られます。こういった生物の構造や機能を人工物に応用する目的の学問は「生物規範工学」と呼ばれます。英語ではbiomimetics。ドン・キホーテの金だらい兜はピカピカに光っていたそうですが、生物規範工学をおうようすれば、さらにピッカピカに光った兜になったかもしれません。
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イチモンジカメノコハムシです。鳥の糞に擬態していると言われています。
2021-07-22 撮影
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