イヌノフグリの花が今年も無事に咲いています。環境省のレッドリストでは絶滅危惧II類に分類されており、京都の町中ではまず見かけることはなくなりました。ある方から雲ヶ畑での目撃情報をいただきましたが、確認していません。自宅マンションの庭に咲いているものは、自生で、おそらくこの土地が以前の工場跡地から整備されて40年ほど変化のないまま来たために生き残っているものと思われます。2年ほど前から芝が密生して、イヌノフグリの勢いが衰えたので、昨年秋に芝を一部剥いだところ、そこに再び勢いよく生えてきました。花壇の一部に土を入れ替えたところにも生えてきているので、繁栄するためにはある程度の攪乱が必要なのかもしれません。
英語のspeedwellという名前について、以前から疑問に思っていたので調べてみました。Online Etymology Dictionaryにはエントリーがありません。OEDには語源の記載がありません。American Heritage Dictionaryには以下のような記載がありました。"From archaic speed well farewell, Godspeed (to you) speed well (from the fact that the flowers of V. chamaedrys wilt and fall off soon after being picked)" 。Random House Unabridgedには、etymologyとして、”1570–80; speed + well; so called because its petals fade and fall early”とあります。
speedはOEDの動詞speedの1番目の定義(vi.1)には、"Succeed, prosper, meet with good fortune"とあります。farewellの意味で用いられるGodspeedのspeedは、本来"May God help you well."(神のご加護がありますように)のhelp「加護」の意味(OED speed vt.3)だと思いますが、上記のOEDの定義(vi.1)の意味としてまずまず通るように思います。しかし、speedwellがAHDやRHUのように、「花の盛りの短いこと」からついた名前とすると、OEDの定義から少し外れるようにも思います。speedがどちらかというとポジティブな内容を持つ語だと思われるからです。花の命が短いことを「よく栄える」「勢いよく咲く」のような意味に取ればspeedの本来の意味と合致するように思えます。
どのような歴史を経て来た名前かは知りませんが、種名のVeronicaは聖ヴェロニカの聖顔布ですし、小さな花に秘められた大きな意味を探る楽しみは尽きません。
2023-02-22