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2019年12月22日日曜日

種子を広める:ガガイモの種の旅立ち

以前にも書きましたが、今年はガガイモの豊作年です。ガガイモの種子は長い毛に揺られて飛翔します。ケサランパサランの正体はこれだ、という方もおられます。この世のものとは思えないゆったりした飛翔は、映画Avatarの聖なる木の精を思わせます。

観察会でガガイモの実を割ると必ず歓声があがります。人の心に感動を与える何かがあるようです。タンポポの種、シャボン玉などにも人は惹かれます。風に乗り浮遊する姿が、日頃は気づかない自然の力を可視化してくれるためかもしれません。

観察会のために採取したガガイモのうち、さやがかなり開いてしまったものを戸外で開き、種子を飛ばしてみました。

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さやはこのように縦に2つに割れます。

風を受けると綿毛が広がり種が浮きます。

徐々に種がほぐれていき...

 さやからこぼれて旅立っていきます。

堤防のそばでさやを開いてみました。






無事に着地して芽が出て育つことを祈ります。

2019.12.21.撮影
2019.12.21.記述


2019年12月21日土曜日

種子を広める:ひっつき虫追加1点:チカラシバ

チカラシバは畑の中よりはむしろ道ばたや野原に多いイネ科の植物です。名前の由来は、力を入れないと穂が抜けないし、根っこからも抜けない強情さから来ています。晩秋に種子が熟すと、穂から簡単に外れ、人が通りかかると、セーターや靴下などに刺さって、動けば動くほど食い込むという、なかなかしたたか者です。一般にイネ科の植物は葉の辺縁にに細かい棘(微鋸歯)があり、不用意に触るとこれで手を切ったりします。この鋭利な微鋸歯は珪酸化合物などからなるガラス質の物質で「プラントオパール」とも呼ばれます。

種子を包む総苞毛(種子の周囲の毛)にも同様の物質と仕組みがあるのでしょうね。これを観察してみました。

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チカラシバの種子です長い総苞毛は約3cm。

よく見ると、毛の表面がなめらかではありません。

さらに拡大。ギザっぽいです。

上の写真を拡大してみました。ここまではカメラとマクロレンズでの撮影。

さらによく見るために顕微鏡を持ち出しました。スマホでの撮影になります。

無理に拡大したので画像が鮮明ではありませんが、微鋸歯がびっしり並んでいるのがわかります。これが「逆棘」の役割を果たして、一方向にしか進まないようになっているわけです。この写真の置き方では、この種がセーターなどに食い込むと、右方向に進んでも左方向には戻りません。

このような仕組みで人や動物にくっついて運ばれ、さらには地面に落ちた場合、地下に徐々に潜り込むことが可能になるのでしょう。おそらくこのような構造だろうとは推測していましたが、実際に見て納得です。

2019.12.20.撮影
2019.12.20.記述



2019年12月10日火曜日

種子を広める:ひっつき虫追加1点

ひっつき虫を追加します。イノコズチです。イノコズチには日のよく当たる道端に生えるヒナタイノコズチと、林の日陰に生える日陰イノコズチがありますが、これは後者の方。たくさん生えているところに足を突っ込むと、ちょっと悲惨な目に遭います。

マクロ撮影は新規に導入したXYステージを使って撮影しました。0.01ミリ単位のピント調整ができるので撮影がとても楽になりました。

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ヒカゲイノコズチの花序です。花は開花後花序に密着します。刺は種子の表面に下に向かって生えています。刺は元々花の小苞でした。

拡大します。

さらに拡大。それぞれの種子に2本の刺が生えているのが分かります。

さらに拡大。

 刺には逆刺がないので、衣服に刺さっても抜きやすいことは抜きやすいです。

2019.12.09.撮影
2019.12.09.記述


2019年12月6日金曜日

種子を広める:ひっつき虫たち

種子を拡散させるもう一つの方法に、人の着衣や動物の毛、鳥の羽根などにくっつく方法があります。ここでは近辺に見られるもののうち4種を、マクロ撮影の写真でまとめておきます。

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ひっつき虫の王者とも言えるでしょうか、オオオナモミです。河川敷などの荒れた土地に生えるキク科の植物で、衣服や髪の毛などへの獰猛なくっつきぶりに、困り果てた方も多いのでは。

素晴らしいかぎ型の大型フックがびっしり。先端がとがって、どのようなものでも触れたものを逃さない意志の強さを感じます。

一本一本をよく見ると、人がまねしたベルクロのフックよりも完成度が高いことがよく分かります。

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それに負けないのがキンミズヒキ。日陰に咲く黄色の花は鮮やかで美しいのですが、花が終わると本性を出してこのように変貌します。ミズヒキの名を持っていますが、ミズヒキのようなタデ科の植物ではなく、バラ科の植物。

このフックも完成度が高いです。

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ヌスビトハギです。これは在来種。比較的日当たりの悪い山陰などに生えています。外来種のアレチヌスビトハギの果実は、多い場合には6つの小節果から成るのに対して、こちらは大人しく通常2つの小節果から成るところが、奥ゆかしい。ですが、ひっつき度の強力さは変わりません。

側面からちょっと見にはフックがあるように思えないのですが...

正面から見ると、何やらもやっとしたものが生えているようです。

拡大します。

さらに拡大。

側面を拡大してみると、フックの生え方には余り規則性がないように思えます。とにかく、行き当たりばったり、触れたものにくっつく、ということでしょう。

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外来種のアレチヌスビトハギです。比較的日当たりの良い痩せた土地などに生えています。在来種のヌスビトハギに比べると花が大きくて、目立ちます。ですが、果実は衣服にびっしりとくっつき、しかもくっつく際に小節果がばらけるため、除去に大変苦労します。

ばらけた小節果の1つです。ヌスビトハギと同様に、表面に微細なフックが生えています。

フックの生え方は比較的規則的なようです。


縦位置から見たところです。在来種のヌスビトハギに比べてフックの密度が圧倒的に多いようです。これが、アレチヌスビトハギの生息域拡大に一役買っているのかもしれません。
2019.12.03.撮影
2019.12.04.記述



2019年12月5日木曜日

種子を広める:飛ぶタネ

寒波の到来でこの1週間は全国的に厳しく冷え込む予報です。夏や秋に咲いた花は実をつけ果実や種子を周囲に広げようとする、種子散布の季節です。方法はいろいろとありますが、飛ぶ、くっつく、食べられる、流れるなどが代表的なものでしょう。

飛ぶ種を4種記録しておきます。

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まずはガガイモ。これはこのブログでも何度か取り上げましたが、今年はよく繁茂してあちこちに独特の形の実を見つけることができます。袋状になっているので、袋果と呼びます。同じガガイモでも、表面に凹凸があるものと、滑らかなものの2種があるようです。採取したもののうち、器量よしのものを並べました。

芋のような紡錘形の形の袋果の中には綿毛のような毛の生えた種子がびっしりと詰まっています。袋果が熟して乾くと縦に1本亀裂が入り、次第に口を開け、種子が風を受けて飛んで行きます。種子は毛を内側に、種を外側に向かって付いています。


個々の種子は中央部が若干ふくれたうちわ型です。毛は種子に対してとても長い。

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次にユリノキ。近年街路樹としてもしばしば見かけるようになりました。日当たりの良い広々とした場所では大木になります。果実はろうそく型の集合果で、個々の種子はへら状の形をした翼果です。種子が実って乾燥するとばらけた状態になり、果実が風に揺られる度に果実の縁からこぼれるように落ちて風に舞います。この木の葉は半纏(はんてん)に似ていることから、ハンテンノキとも呼ばれます。


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次にアカマツ。ご存じ「松ぼっくり」は松の仲間の果実の総称です。松ぼっくりは湿ると閉じ、乾くと開きます。この開閉を繰り返すうちに中の種子がこぼれ落ちるというわけです。

鱗片の根元に2つずつの翼果が見えます。


翼を持つ松の種子は比較的小さいですが、翼を持たない大きな実をつける松もあり、そのような種の種子はとても大きいです。実を包む外皮も分厚くて、石でたたかないと割れないようなものもあります。日本固有の松はほとんどが翼を持つ小さい種子の種類です。

この松ぼっくりの種子を好んで食べる鳥がヤマガラやカケス。リスたちの好物でもあります。リスが食べた食痕は「森の海老フライ」と呼ばれて、子どもたちが見つけると大喜び。

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最後にケヤキ。これは何度か書いていますが、着果短枝と呼ばれる果実を結ぶための特殊な枝に花が咲き、果実が熟す頃には着果短枝が種子をつけたまま、風に舞い落ちます。着果短枝は早々と飛ぶものも多いのですが、かなり遅くまで木にしがみついているものも沢山あるようです。通常の葉が散った後に、しっかり残って、黒っぽい固まりのようになっているのがそれです。強い北風が吹くと、さわさわと南に向かって枝を飛ばす姿が見られます。


2019.11.30. 2019.12.03.撮影
2019.12.03.記述
2019.12.06.修正






京北の林内探索

京北の樹木植物に詳しい方に案内していただいて、ホンゴウソウを探しに行きました。昨年枯れたものを見つけられたとか。目的の場所に行くと、Bingo!約20株ほどが集まって、周囲にもまばらに生えていました。ヒノキ林の林床です。そこから冬虫夏草探索に切り替え、ムシヒキアブのアナモルフ、ガ...