2019年12月5日木曜日

種子を広める:飛ぶタネ

寒波の到来でこの1週間は全国的に厳しく冷え込む予報です。夏や秋に咲いた花は実をつけ果実や種子を周囲に広げようとする、種子散布の季節です。方法はいろいろとありますが、飛ぶ、くっつく、食べられる、流れるなどが代表的なものでしょう。

飛ぶ種を4種記録しておきます。

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まずはガガイモ。これはこのブログでも何度か取り上げましたが、今年はよく繁茂してあちこちに独特の形の実を見つけることができます。袋状になっているので、袋果と呼びます。同じガガイモでも、表面に凹凸があるものと、滑らかなものの2種があるようです。採取したもののうち、器量よしのものを並べました。

芋のような紡錘形の形の袋果の中には綿毛のような毛の生えた種子がびっしりと詰まっています。袋果が熟して乾くと縦に1本亀裂が入り、次第に口を開け、種子が風を受けて飛んで行きます。種子は毛を内側に、種を外側に向かって付いています。


個々の種子は中央部が若干ふくれたうちわ型です。毛は種子に対してとても長い。

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次にユリノキ。近年街路樹としてもしばしば見かけるようになりました。日当たりの良い広々とした場所では大木になります。果実はろうそく型の集合果で、個々の種子はへら状の形をした翼果です。種子が実って乾燥するとばらけた状態になり、果実が風に揺られる度に果実の縁からこぼれるように落ちて風に舞います。この木の葉は半纏(はんてん)に似ていることから、ハンテンノキとも呼ばれます。


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次にアカマツ。ご存じ「松ぼっくり」は松の仲間の果実の総称です。松ぼっくりは湿ると閉じ、乾くと開きます。この開閉を繰り返すうちに中の種子がこぼれ落ちるというわけです。

鱗片の根元に2つずつの翼果が見えます。


翼を持つ松の種子は比較的小さいですが、翼を持たない大きな実をつける松もあり、そのような種の種子はとても大きいです。実を包む外皮も分厚くて、石でたたかないと割れないようなものもあります。日本固有の松はほとんどが翼を持つ小さい種子の種類です。

この松ぼっくりの種子を好んで食べる鳥がヤマガラやカケス。リスたちの好物でもあります。リスが食べた食痕は「森の海老フライ」と呼ばれて、子どもたちが見つけると大喜び。

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最後にケヤキ。これは何度か書いていますが、着果短枝と呼ばれる果実を結ぶための特殊な枝に花が咲き、果実が熟す頃には着果短枝が種子をつけたまま、風に舞い落ちます。着果短枝は早々と飛ぶものも多いのですが、かなり遅くまで木にしがみついているものも沢山あるようです。通常の葉が散った後に、しっかり残って、黒っぽい固まりのようになっているのがそれです。強い北風が吹くと、さわさわと南に向かって枝を飛ばす姿が見られます。


2019.11.30. 2019.12.03.撮影
2019.12.03.記述
2019.12.06.修正






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