キリの木といっても実はいろいろあるようです。キリ、アオギリ、イイギリはそれぞれ、キリ科、アオイ科、ヤナギ科に属する樹木です。実の形を見れば全く異なる種であることが分かります。
アオギリやイイギリは公園などに植えてあることも多いのですが、キリにはなかなかお目にかかれません。ですが、幼い頃を過ごした郷里の町では珍しい樹木ではありませんでした。キリは軽く加工しやすく、湿気を通さないことから古来タンスの材料として重んじられてきました。また、断熱性や火に強いいことから、金庫の内張にも用いられてきました。
故郷に近い越前では、北前船に乗せる船舶用の金庫、船箪笥は外側を丈夫なケヤキで、内側を桐で作られました。頑丈な鉄枠で守られ、錠前を施された船箪笥は相当に重いものだったと思いますが、船が難破しても、船箪笥だけは軽い桐の浮力と機密性で中身を損なうことなく波間に浮かんだそうです(あるいはそうあれとの願いだったかもしれません)。とまれ船箪笥にも必須の材料であったのは間違いありません。
昔から女の子が1人生まれると桐の木を1本植え、嫁に行く際にはその桐の木でタンスを作るということが言われていました。私は男兄弟でしたが、裏の畑には4,5本の桐の木が植わっていたのを覚えています。成長が早く、材が柔らかいせいか、幹の中にカミキリムシなどが入ることが多く、祖父が入り口に泥に練り込んだ薬剤を詰めていたのを覚えています。
当時は種がこぼれて道端や屋敷の隅の空き地などあちこちに桐の若木が生えていました。昔はどこにでもあった桐の果実と種子になかなか会えなかったのですが、このたび手に入れましたので、観察してみました。
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種子はとても小さな軽いもので、周囲に翼があります。
メモリは0.5ミリですので、種子の差し渡しは2ミリ程度、翼を含めても5ミリあるかないか。極小の種子です。
種子はこのような果実の殻の中に入っています。
部屋は2室に分かれていて、それぞれに数百の種が外側から内側にかけてびっしりと並んでいました。これは種がかなり飛んでほぼ空になった状態です。
それにしても、種子は小さいです。時折、巨樹の種が余りにも小さいことを知って驚きますが、キリも種子を観察してみて、その余りの軽さと小ささに驚きました。
2019.12.11.撮影
2019.12.12.記述