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2020年9月4日金曜日

『癒しの虫たち』

 『癒しの虫たち』(リピックブック、2019)を読みました。共に芋活.comの管理人である、川邊透氏が写真を担当し、前畑真実氏が写真の選択と文章を担当した書籍です。イモムシを中心に昆虫たちの「癒やし系」の側面を捕らえた写真と、その虫たちの生態を短く解説した写真集で、狙いは、虫アレルギーとも言える今の読者たちに、虫のかわいさへの気づきを促し、昆虫全般への関心を喚起したいということのようです。

どの写真もとてもかわいく(虫好きの私はそう思いますが)、よく撮れています(私はこれほど綺麗にシャープに撮れない)。写真解説やエッセイも、ほっこり系で、読者の心を十分にほぐしてくれそうで、本書の目的は十分に果たされているように思います。巻末に付されたそれぞれの「虫探しのコツ」は、虫探しの要領をコンパクトにまとめています。「虫探しのココロエ」は、虫探しの際には生態系保全に配慮しようという趣旨の注意書きで、特に良いと思いました。

虫にこれまで接したことのない人、あるいはガチガチの虫アレルギーを自認する人たちに一度読ませて、意見を聞いてみたいものです。虫好きというと、何かオタク的という偏見(解消に一役買う書籍でしょうね。

個人的には、自宅庭でも飼育している寸胴イモムシのジャコウアゲハもかわいいと思いますので、これが入っていないのがちょっと残念。また、一見こわもてのツマグロヒョウモンや、葉を丸めて隠れるキタテハ、アカタテハの幼虫も飼育してみると、その生態を含めて興味深いです。この本をきっかけに、自分を癒やしてくれる、自分だけの「癒しの虫」探しをはじめると良いかもしれませんね。

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ところで、ウチで飼育中の癒やし系です。二頭共にすこぶる元気でわしわし食べ、巨大なイモムシになりました。活力あるイモムシということで、「活芋」とでも呼びましょうか。

こちらがブラッキー。皮膚が伸びてきたせいか、かなり茶色っぽくなりました。眼玉模様の中のキャッチライトがチャームポイントです。


そしてこちらがブラウニー。最近は固い軸を好んで食べるようになっています。

終齢の終わり頃でしょう。明日か明後日にも前蛹化するのではないかと思います。

2020.09.03.撮影
2020.09.03.記述



2020年8月30日日曜日

癒やしのイモムシ!?

In recent years, more and more books focusing on plants and insects that are close to us but whose existence we are not aware of have been released. Here are some examples.

近年身近な植物や昆虫の存在を見直す書籍が続々と発売されています。先般は多田多恵子さんの写真集『美しき小さな雑草の花図鑑』(山と溪谷社、2018)が朝日の夕刊トップで紹介されていました。続編『もっと美しき小さな雑草の花図鑑』が今年発売になっています。コロナの影響で近所の散歩散策と、そこで出会うちいさな生き物たちを愛でる機運が高まってきているようです。

昆虫ものでは、少し前の出版になりますが、新開孝氏の『虫のしわざ観察ガイド—野山で見つかる食痕・産卵痕・巣』(文一総合出版、2016)が秀逸です。同じ著者から今年『虫のしわざ図鑑』(少年写真新聞社、2020)が出版されたようで、どのような内容か、気になります。

『虫のしわざ...』は、昆虫そのものの図鑑ではなく、食痕・産卵痕・巣に注目して、昆虫とその生態を探ろうという点で、これまでの図鑑とは目の付け所が異なり、大変興味深いです。そもそも昆虫たちは隠れるのがとても上手なので、その隠れ家を探す方が、昆虫そのものを探すよりじっくり取りかかれますし、何より探偵のようで、楽しい。

類似した書で、とよさきかんじ氏の『手すりの虫観察ガイド: 公園・緑地で見つかる四季の虫』(文一総合出版、2019)はクモの写真が多いので、クモ嫌いの方にはちょっと厳しいかも知れませんが、この書も身近な昆虫への導入本としてすぐれていると思います。

これらの書籍に少し目を通すと、これまで何の意識もせずに通り過ぎていた道端の草花や、気にも止めなかった草や木の食痕が、急にいのちにあふれて生き生きと見えてくるかもしれません。また、カブトムシやクワガタなど、定番で人気の虫たちばかりでなく、目立たずごく普通に、しかし一生懸命に生活する虫たちの存在に、心が和みます。

イモムシや蛾についても最近『癒しの虫たち』というタイトルをつけた書籍が発売されています。また、イモムシ・ケムシの専門サイト「芋活.com」なるサイトもあります(ちなみに、『癒しの...』書籍はこの芋活.comのメンバーが作成されたものらしいです)。図書館で請求中ですので、目を通したらレビューしましょう。

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さて、その癒やし系のイモムシの1つアケビコノハの幼虫を久しぶりに見つけました。自然界では天敵に襲われることが多いので(という理由をつけて)、自宅に持ち帰り飼育器の中で飼うことにしました。同じ時期の産卵かと思いますが、色が微妙に異なります。

こちらが茶色系。

こちらが黒系。

フラッシュを焚いて写真を撮るとあまりその差がわかりませんが、上が茶、下が黒です。とりあえず、ブラウニーとブラッキーという名前をつけておきましょう。

なかなかのグルメで、当初採ってきたアケビの葉が少し固めだったのか、あまり食が進みません。そこで、若芽を採ってきて与えたところ、もりもりと食べ、当初約4センチだった体長が2日あまりで7センチになりました。下はこれは食欲がなかった頃の写真です。

 成長を見守りたいと思います。


2020.08.25.撮影
2020.08.28.記述







2019年10月8日火曜日

観察記録:秋の野原に遊んで

A short walk on the riverbank takes me to a stretch of Brazilian verbena, or Verbena brasiliensis. Its flowers bloom till late autumn, providing honey seeking insects precious opportunity to suck on the nectar.

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秋の深まりと共に蜜源植物が少なくなりますが、この時期に、夏の休眠期間を終えて再び咲く花に、アレチハナガサの類があります。アレチハナガサ、ダキバアレチハナガサ、ハマクマツヅラ、ヤナギハナガサなど。いずれも野生種のバーベナで、いずれも今世紀に日本に到来した外来種です。日本の河川の河川敷に広く繁茂し、今ではセイタカアワダチソウなどと並んで、秋の風物詩になった感があります。

この花は、秋の終わりまで咲き続け、蜜を求める虫たちの貴重な蜜源となっています。

ベニシジミです。今は色の濃い夏型です。

ウラナミシジミです。ちょこっと出た尾状突起と一点さしたオレンジ色がチャームポイント。

イチモンジセセリです。食草がイネ科の植物で、かつては稲の害虫として悪者扱いされました。この時期にならないと見られません。セセリチョウの代表格。

先ほどのベニシジミの翼の表側です。春型は全体に色が薄いです。

ツバメシジミのオスのようです。シジミチョウは小さい上に敏捷で、しかも翼の表をなかなか見せてくれないので、同定が難しい場合があります。

ウラナミシジミの翼の裏表両方が見えます。

ヒメアカタテハです。食草はヨモギ。今年はこれを二頭卵から成虫にまで育てました。幼虫は巣を作ってゆったりした生活を送りますが、成虫はきわめて敏捷です。蛹が黄金色で実に美しい

翼の表が見えます。

シロオビノメイガです。

ツマグロヒョウモン(メス)も来ていました。

翼の裏側が見えます。

再びヒメアカタテハ。図鑑的写真です。

帰路に立ち寄ったガガイモの壁では、今年は豊かな実りが期待できます。


葛の葉にコムラサキが休んでいました。

口吻が黄色です。ゴマダラチョウなどと同じです。

 モンキチョウが交尾していました。

草原ではノビタキの姿が見えます。2週間ほど立ち寄って、南に下っていきます。

蝶やバッタたちはノビタキのエネルギー源になります。

 今年は河原の一部でノゲイトウの花園ができていました。

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さて、先日来育てていたアケビコノハが成虫になりました。2匹育てて、1匹は病死(あるいは寄生虫によるものか)。河川敷の茂みで自然に育って蛹になった2匹は寄生バエの犠牲になり、結局4匹のうちこの1匹だけが成虫になりました。

怒りんぼで、ちょっと刺激を与えると、飼育器の中で興奮して暴れまくります。これはリリース直前。かろうじて羽を広げた写真を撮ることができました。

美しい目玉模様です。木の葉への見事な擬態と共に自らを守る数少ない手段です。
2019.10.07.撮影
2019.10.07.記述



2019年9月21日土曜日

自然観察:アケビコノハ

やっと見つけた、というのが正直な感想です。例年アケビコノハの繁殖する場所を通るたびに探していました。

幼虫の独特な形は他に類を見ません。二匹を見つけました。写真上は小さな方、下は大きな方です。尖った鎌首を持ち上げているように見える部分は、実はおしりで、丸まっているのが胴と頭。本当の頭はおしりの反対側、丸まった部分の端っこにあります。

成虫の形も独特で、見事に枯れ葉に変身してしまい、落ち葉の中ではまず見つかりません。擬態の名手です。うまく羽化してくれれば、成虫の素晴らしい擬態を見ることができます。


 2019.09.14.撮影
 2019.09.19.記述




2019年6月19日水曜日

今季初のアケビコノハ

春からずっと見守ってきたアケビの木があります。木と言っても、他の樹木やフェンスに巻き付いた一群のアケビ(たち)の蔓ですが。お目当てはアケビコノハ。昨年この場所で見つけて、自宅に保護(寄生虫などに結構やられます)した個体が、成虫になるまでを観察しました。今年も必要ならば、保護、ないしは「見守り隊」をしたいと思っています。

春から探していたところ、今日やっと一匹の幼虫を見つけました。緑系統と黒系統の幼虫がいるのですが、これは黒っぽい方です。側面の大きな眼状紋が特徴で、危険を感じると、3つに折れて固まり、なかなか動きません。蛾になった成虫の前翅は、枯れ葉そっくりで、見事な擬態が特徴的です。今年もすこやかに育ちますように。

枝を揺すると丸く固まりました。本物の頭は写真では上部の少し丸くなったところ。尾部をもっと上げて固まるポーズが一般的です。

しばらくすると安心してほぐれてきました。眼状紋は左右にあり、前部や上部からも見えます。成虫の後翅はオレンジ色で、これにも大きな眼状紋があります。双方共に、天敵への威嚇でしょうね。
2019.06.18撮影



京北の林内探索

京北の樹木植物に詳しい方に案内していただいて、ホンゴウソウを探しに行きました。昨年枯れたものを見つけられたとか。目的の場所に行くと、Bingo!約20株ほどが集まって、周囲にもまばらに生えていました。ヒノキ林の林床です。そこから冬虫夏草探索に切り替え、ムシヒキアブのアナモルフ、ガ...