2024年5月10日金曜日

平均棍

カやハエなどの「双翅目(ハエ目)」の昆虫には、前翅の付け根に退化した後翅が見えます。多くは先の丸まった棍棒のような形をしており、「平均棍」と呼ばれます。わかりにくい日本語ですが、英語では balancer というので、こちらの方が機能的に理解しやすいです。飛翔時には、前翅の羽ばたきと同じ早さで震動し、体の平衡を保ったり、飛翔運動に関わる神経の興奮伝達系の一部として働くことがわかっています。

体の大きなガガンボの平均棍は大きくて観察が容易です。今日は壁に止まったハエ(種類は不明)に平均棍を見ることができました。おそらく蚊では、この平均棍が、例の「プイ~~ン」という羽音になるのだと思います。

今夏、寝ぼけた耳に「プイ~~ン」の音を聞いたら、慌てず騒がず「お~、平均棍が頑張ってるな~」と思う心のゆとりを持ちたいものです。


2024-05-08

2024年5月8日水曜日

ナミガタチビタマムシ

新緑のムクノキに小さな虫を見つけました。ムクノキの葉の縁から葉を食べ進んでいます。手に取ろうとすると、ポロリと落ちてしまうので、写真に撮って調べると、ナミガタチビタマムシのようです。食樹はムクノキの葉。同じような姿をしたチビタマムシに、クズノチビタマムシがいます。これも今の時期に発生しており、先日観察しました。

これらの昆虫の名前が若干気になります。上記のタマムシでは「チビ」という部分。これが蔑称に当たるのかどうか。よく言及される「放送禁止用語一覧」は自主規制のためのリスト。特定の属性を持つ人々をおとしめるような表現であれば問題ですが、「チビ」の場合は使われる文脈によると思われます。昔懐かしい『ちび黒サンボ』は問題外としても、愛情を込めて「おチビちゃん」と近所の子を呼んだら、これは差別か?「この鉛筆、エライ、チビてるなあ」もダメなのか、と言うことになります。

差別的な表現を撤廃するということで、日本魚類学会は2007年に標準和名を変更しました。米昆虫学会は、「民族や人種に言及する名称や不安をかき立てる名称を禁止するとともに、特に侵襲外来種については特定の地域に言及する名称を非推奨とした。」とのこと。これによって、オオスズメバチの名称は、asian giant hornet から、northern giant hornet に変更されました。日本の昆虫の世界では、メクラカメムシやメクラアブという名称が、それぞれカスミカメムシとキンメアブに変更されたということです。日本の昆虫学会は、それ以外の昆虫の名前の変更には消極的なようですが、さて、今後どうなりますやら。

交尾個体が見つかりました。

2024-05-06

2024年5月6日月曜日

ニワハンミョウ

一昨日京北の林縁に遊びました。京都市内と異なり、やはり自然度が高い山中はいろいろと見るものがあって楽しいです。怒濤のようなインバウンドツーリストとも、ここでは無縁。ありがたいです。ウワミズザクラがちょうど花期を終えようとしているところなど、やはり市街とは異なる季節の流れだな、と感じます。

観察地への途中、ヒノキの林が切れる林道の日だまりに、ニワハンミョウが数匹動き回っていました。ハンミョウはよく観察したことがあるのですが、ニワハンミョウはあまりじっくり見たことがありません。近づくとハンミョウと同じように、飛び下がって「道案内」をするのですが、日だまりを好むのか、日陰に入る場所まで来ると、反転して日だまりに戻ります。

それでは、と砂利道に膝をついてカメラを構えると、しばらく躊躇していましたが、徐々に近づいてきました。立ち止まり、進み、立ち止まり、進み。「ダルマサンガコロンダ」ではありませんが、用心しながらも、こちらが特に危害を加える様子でもないとわかったのか、20~30cm近くに、さらにはカメラから10cmほどのところへ。

おいおい、これではフォーカスできないよ、と少し身じろぎして遠ざけると、しばらくしてまだ近くへ。「おとうちゃ~~ん」と慕われているような錯覚に陥ります。しかし、よく顔を見ると、う~~ん、これが息子だったら、ちょっとたじろぎますね。


2024-05-06



2024年5月5日日曜日

Koru(コル)

Koru(コル)はニュージーランドの先住民マオリの言葉で「螺旋(らせん)」あるいは「円環」を意味し、特にニュージーランド固有の「シルバーファーン」の芽生えをKoruと言うようです。展開しようとする太い渦巻きは秘められたエネルギーを感じさせ、「新生」「成長」「平和」などの象徴とされます。シルバーファーンの芽生えや展開した葉は、ニュージーランドの国章や、ニュージーランド航空のシンボルマーク、ラグビーチームのオールブラックスをはじめ多くのナショナルスポーツチームのマークに採用されています。

先日滋賀県の林縁を歩いていた際に、ウラジロの芽吹きを見ました。ウラジロは冬派を枯らさず、翌年に前年の葉柄の上に新たに芽吹きます。日本では大きくなっても2メートルほどですが、南の地方では樹木に寄って、場合によっては10メートルを超すこともあるとか。

この日は谷の周辺で、様々な成長過程の新芽を見ることができました。最初のうちは1つの新芽が伸びてきて、やがて2つに分かれ、左右の葉として展開していきます。







2024-05-03

2024年2月11日日曜日

野鳥観察会下見

2月17日に野鳥観察会を依頼されているので、その下見に出かけました。出発点の公園から始めます。

ダンダラテントウでしょうか、かなり小さな個体です。

エノキの枝に、ゴマダラチョウの幼虫が縊れていました。病気でしょうか。

小川にはアオサギ。

コサギも熱心に獲物を狩っています。

マガモ、青首です。

こちらがメス。

ホオジロがさえずりを始めています。春ですね。

岸辺のヤナギにはツグミの姿が。今年は異常に少ないです。

上流彼方には、ヒドリガモとカイツブリ。

ハマシギ4羽が採餌中です。

捕らえたのは、トビケラの幼虫でしょうか。かなり大きいです。

こちらでも。

イカルチドリの姿も。

遠くに着地したケリです。要港に暖められた河原の石の陽炎で画像がぼやけます。

セグロセキレイ。

モズ。オスです。

帰り道、水際の柳にスズバチの巣がありました。

2024-02-10

2024年1月28日日曜日

自宅周りで

昨日に比べれば暖かい一日でしたが、腰の調子が思わしくないので、午前中はパソコンで会報の情報整理(これが腰に悪いのかもしれませんが)。あれこれデータをいじくって、これから先2年分(24ヶ月)あまりの編集計画の骨子を作りました。データを整理し始めて約2ヶ月。やっと納得でき、使いやすいデータになったと思います。

体を少々は動かす必要があるので、午後からは散歩ですが、脚が重い。自宅周辺を周回しておきました。

自宅庭のイヌノフグリです。開花し始めました。

オオイヌノフグリに比べると遙かに小さいですが、それゆえに清楚で可憐な感じがします。

保全花壇に回ると、ヒラタアブのサナギが、これはオオイヌノフグリの葉裏に付いていました。

保全花壇でもイヌノフグリが咲き始めています。こちらは北風が強く陽光も強いので、葉が真っ赤になっています。寒さと紫外線を防ぐためでしょう。

河川敷の樹木伐採の跡地には、たくさんのカラスウリの塊根が見えます。これは相当巨大なもの。4,5年経過しているでしょうか。ここは雄株ばかりの場所で、これも雄株でしょう。

先日撮影したときと比べると、ノイバラの芽がかなり伸びていました。

植栽されているピラカンサも色鮮やかになってきました。毒性分を含んでいるので、野鳥がこれを食べるのはその他の冬の食糧が尽きたころになりますね。

あじさいの葉痕と冬芽です。

ユキヤナギの中に見つけた蜂の巣です。アシナガバチのものであることは間違いないのですが、種類はわかりません。同じ形のものばかりですが、なぜこのようないびつな形になるのでしょうか。いったん細長い巣をかけ始めたが、冬が迫ってきたので、幼い幼虫を見限って、成長の進んだものへのケアに集中したのでしょうか。

何かのさなぎ尾部が残っています。ホシミスジのものではないかと思いますが、一度幼虫やサナギを見てみたいものです。

ユキヤナギに絡まっているつる性植物です。ヘクソカズラでしょうか。

枯れ葉の中には北風を避けてアオツヤカメムシが冬眠していました。

2024-01-27

2024年1月27日土曜日

渡月橋から亀山公園あたり

昼過ぎに出かけて渡月橋から亀山公園に鳥見に出かけましたが、川沿いでは少々楽しめたものの、亀山公園は常緑広葉樹のアラカシが大量に伐採されて、その他の木々も大きく剪定されて、異様に明るくなり、以前のように小鳥の隠れ場所がありません。サクラとカエデ以外は伐採するかのような勢いです。野鳥たちの隠れ家がなくなり、当分の間野鳥不毛の地になりそうです。インバウンドでふくれあがる観光客を、まずは亀山公園から竹の小径に誘導し、帰りに商店街を通らせて土産の売り上げを伸ばそうとする、観光戦略の一環でしょうね。この時期でもあまりにも多い観光客は、もはや「観光公害」を超えて、「観光汚染」とでも言いたいです。歩きながらの飲食、静かな林の中を大声を上げて歩く、通路をふさぎ怪しげなフィギュアを立てての撮影などなど。観光を糧とする仕事で潤うのはごく一部の人々。地域の住民にとってはコロナのころの静寂さが懐かしいです。

さて、川沿いの野鳥たち、フツ~の鳥たちです。ツグミ。今年はほぼ例年通りでしょうか。

婚姻色があまりにも派手で、しばらく何の鳥かわかりませんでした。カワウ。

オナガガモ。オス3羽です。

イソシギ。

カルガモのペア。この2羽はとてもきれいな羽をしていました。若いカップルでしょうか。

今日初めて気づいたシリブカガシ。意外な場所にもありました。


気づいた理由はこれ。地上のドングリから気づきました。

その隣を見てみたら、梢にたくさんのネコアシが。これも今まで気づかなかったエゴノキです。そういえば、晩春にこのあたり、エゴの花がたくさん散ってたっけ。

1週間前に開き始めた梅はもはや見頃です。

早咲きのアセビもきれいでした。


 2024-01-26

平均棍

カやハエなどの「双翅目(ハエ目)」の昆虫には、前翅の付け根に退化した後翅が見えます。多くは先の丸まった棍棒のような形をしており、「平均棍」と呼ばれます。わかりにくい日本語ですが、英語では balancer というので、こちらの方が機能的に理解しやすいです。飛翔時には、前翅の羽ばた...