午前の散歩で土手の斜面にオオイヌノフグリの群生が、陽光を浴びて輝くような青色の花を咲かせているのに気づいた。この植物の命名は、かの牧野富太郎博士だそうだが、彼はそのほかにも、ハキダメギク、ヘクソカズラなど、命名された植物には気の毒なような名前をつけたとされる。
しかしながら、イヌノフグリの名前そのものは、江戸時代中期の『
物品識名(ぶっぴんしきめい)』や『
草木図説(そうもくずせつ)』に登場するという。明治時代初頭に欧州原産のタチイヌノフグリが現れ、しばらく後にオオイヌノフグリが現れたと聞く。江戸時代からイヌノフグリの名前があるのならば、牧野富太郎博士のみに命名の責任を負わせるのも若干気の毒な気がする。
日本のオオイヌノフグリの学名は、
Veronica persicaで、科名と属名は現在オオバコ科コマノハグサ属となっている(新エングラー体系やクロンキスト体系などの旧分類では、ゴマノハグサ科、クワガタソウ属となっていたが、遺伝子解析に基づいた新分類によって現在の分類となった)。
Veronicaは例の聖骸布伝説の「ヴェロニカ」、
persicaは「ペルシャの」の意味。この種の原産地は中央アジアのイランあたりらしい。英名はBuxbaum's speedwellである。
イギリスではイヌノフグリの仲間を一般にspeedwellと呼ぶ
。日本のオオイヌノフグリに似た花で
、Germander speedwell
Veronica chamaedrys、Wall speedwell
Veronica arvensis、そしてGreen field-speedwell
Veronica agrestisがあるということだが
、図鑑の挿絵を見ると
、日本のものとは若干異なっているように思える
。日本のものはやはりペルシャあたりから来たと言うことか
。
英名のspeedwellの意味については諸説あるが
、英国に限ると
、この草の薬効成分が傷によく効くこと
(speedはhelpを意味する
)ことから
、あるいは
、この花を摘むとすぐに花びらが落ちてしまうことから
("speed well"は別れの言葉"farewell"あるいは"good bye"を意味する
)付けられたとの説がある
。また
、森の空き地に鮮やかに咲くこの花の美しさを
、鳥の目の美しさにたとえて
、bird's-eye speedwell や blue bird's eyeとも呼ぶそうである
。このことから
、もしこの花を踏みにじると
、小鳥たちが復讐して
、踏みつけた人の目をつつきに来るという迷信もあるという
。
「ふぐり」については、その実の形から来たものであろうが、英語ではこれを上下逆さまに見て、"heart shape"と、ハート型と理解しているのが面白い。
写真は出直して、曇り始めた午後に撮ったため、閉じかけています。
ロゼットは成長の勢いを秘めて、春を待っているようです。
by harusan
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