2019年6月20日木曜日

ムラサキ

『万葉集』巻1-20に、「あかねさす紫野行き標野行き野守は見ずや君が袖振る」という額田王の歌があります。これに大海人皇子が返した歌「紫のにほへる妹を憎くあらば人妻ゆゑにあれ恋めやも」巻1-21があります。相思相愛の熱い恋心を歌ったものとして有名ですが、双方の歌に現れるムラサキは現在京都府のレッドデータブックで「絶滅寸前種」とされており、特別な植物園に行かないと見ることすらできません。長い間探していたのですが、このたびお目もじがかないましたので、その写真を掲載しておきます。

ムラサキという植物は、『万葉集』当時は紫色の染料の原料として重要で、朝廷の直轄領で栽培されていたそうで、紫野とはその地のことだそうです。標野は一般人の立ち入りが禁じられた御料地。京都市内にも紫野という地名がありますので、古くはその付近で育てられていたのでしょうか。

初めて見たムラサキは、杉皮に包まれて、特別扱いです。水はけのよい土地を好むそうで、このようなあつらえになっているのでしょう。かつては広く作られていた植物が、なぜ絶滅寸前になってしまうのでしょうか。考え込んでしまいます。
2019.06.02撮影







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