2019年6月21日金曜日

ヨモギ

ヨモギが旺盛に茂ってきました。冬に小さなロゼットを作り、早春に伸びてきた頃を摘んで湯がいて絞り、刻んで餅に入れてつくと、香り高い草餅ができます。田舎では、湯がいたヨモギを固く絞って団子にし、干して、完全に乾ききったものを保存しておきました。そうしておくと、丸一年風味が保て、使うときにはお湯で戻して餅に入れてつく、そうすると、雪深い正月にも草餅を楽しめたのです。

ヨモギの効用はこれだけではなく、その葉裏の綿毛を集めて、「もぐさ」として、「お灸」に用いました。「燃える草」を意味する「もえ草」がなまって、もぐさという名前になったと聞いています。もぐさの材料としては、普通のヨモギも使われますが、綿毛の長いオオヨモギが適していると言われます。オオヨモギは日本海側から北陸・東北・北海道に自生するヨモギの一種で、草丈2mにもなるそうです。

関西近辺では伊吹山に多いので、「伊吹ヨモギ」と呼ばれることもあり、古来から伊吹地方はもぐさの産地として有名でした。百人一首(51番)にもある、藤原実方朝臣の

 かくとだに えやは伊吹の さしも草 
    さしも知らじな 燃ゆる思ひを
        (『後拾遺集』恋一・612)

の歌には、伊吹山のモグサ「伊吹のさしも草」が歌い込まれています。「思ひ」の「ひ」は「火」に掛けた言葉で、「さしも草」と「燃ゆる」と「火」は、据えたお灸が燃える様子を連想させる縁語になっています。「伊吹」の「いふ」は「言う」と掛けており、「えやはいふ」は「とても言えない」の意味。「伊吹のさしも草」は下の「さしも」に掛かる序詞(じょことば)です。燃えるお灸を据えたように、恋心にジリジリと焼かれるような思いがよく表出されているでしょうか?お灸がほとんど使われなくなった現代では、ちょっとアピールする力に欠けているかもしれません。

「...山が燃える...くらくら燃える地を這って、あなたと越えたい...」石川さゆりの「天城越え」ではありませんが、現代の恋ならば、もっと派手に激しく「メラメラと」「燃え上がる」ほうが似つかわしいのかもしれませんね。

河川敷の至る所に生えています。多年生の植物ですので、種の他に株で増えます。

花穂はまだ出ていませんが、今の時期ではほぼ成長しきっています。

ナガメの幼虫など、虫たちの隠れ家にもなっています。カメムシの類にとってはふんだんにある食草のようです。

この毛をとってもぐさにするということですが...そんなに簡単には取れません。若い頃を摘んで全草をほぐすのでしょうか。



ヒルガオが絡まってつぼみを膨らませています。

そばにはクソニンジンもほぼ成長しきっています。個人的にはこの草のにおいは、ハーブのようでよい香りだと思います。この名前はちょっと可愛そう。

スイバの花穂が実って、全草枯れてきています。目的を果たして次の世代へ命を渡します。
2019.06.20撮影



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