ですが、よく観察すると捨てがたい魅力もあります。花は目立たない直径5ミリほどの小さな花ですが、ルーペなどで見ると、結構可愛い。この小さな花が、実は蜜をたっぷり出して、昆虫たちの大切な蜜源になっています。花は6月から秋の終わり頃まで次々と咲き、蝶、蜂、アブ、アリなど、様々な昆虫が訪花し、特に花の少ない秋の終わりには、アレチハナガサなどと並んでとても大切な蜜源になります。
この花はまた、典型的な「雄ずい先熟花」(あるいは、「雄性先熟花」)で、おしべとめしべの成熟する時期が異なり、同じ個体での自家受粉を避けるようになっています。つまり、花が咲いた直後はおしべが発達しており、先に成熟して葯を広げて花粉を虫たちに開きます、おしべがしぼんでしまうと、めしべが成熟して受粉可能な状態になる、というわけです。性転換する花、という方が分かりやすいでしょうか。単一個体での受精を避け、種の多様性を保とうとする仕組みです。
最初おしべが優勢な時期には小さいながらも緑色の花びら(花弁)があるのに、めしべの勢いが増すと、花弁が落ちてしまい、かわりに花の基部(花盤)がふくれてきます。さらにめしべが枯れる頃には花盤がそれまでのオレンジ色からピンク色になります。花の色を見ると、花の状態がすぐに分かります。このように、花の色の変化も楽しい植物です。
下の写真の中央の花はおしべが成熟しています。ツヤツヤ光るのは花蜜。左と左下部には柱頭が枯れ始めた花が見えます。
拡大してみました。
さらに拡大。
こちらもおしべの成熟した花と、めしべの成熟した花があります。多くの蕾がありますが、一斉に開花しないのは、賢い戦略です。
成熟しためしべです。花盤がきれいなピンク色になっています。
こちらでは、実が大きくなり始めています。周囲に咲き終わったピンク色の花がたくさん見えます。
撮影している間にナミアゲハが吸蜜に訪れました。立派なアゲハです。飛翔しながら、かる~く脚を花に載せて吸蜜しています。華麗です。
アゲハの足元を拡大してみました。おしべが成熟している花から吸蜜しています。
もう一枚の写真では、めしべが成熟している花から吸蜜しています。ヤブガラシは、こうして、蜜をふんだんに出し続けることで、昆虫たちに花粉の媒介を促します。
2019.06.22撮影
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