ササユリが咲く季節になりました。近隣の2つの植物園で開花を鑑賞してきました。ササユリには懐かしい思い出があります。
私が小学生だった頃、祖父母の住む山間の里では、薪などを取るために山をよく手入れし、里近く光のよく差す山の中にはササユリがそれこそ至る所に咲いていました。多く咲いているところでは一目で20ほどの花が見えたでしょうか。
ササユリは葉が他のユリに比べて茎にまばらについており、花数も通常1つで、ほの暗い林間にそっと咲く姿が、楚々とした気品があります。また香りも柔らかな甘い香りで、押しつけがましくなく、姿よし、形よし、香りよしで、里山に咲く花の女王といってもよいかもしれません。
現在は里山の荒廃に伴って、採取禁止植物として保護の対象になっている地域もあるようですが、昔はこれを採取して町に売りに行ったり、採取して庭に植えて観賞したりして楽しみました。よく山に入った祖父も、このユリを持ち帰って広い庭の片隅に植えていましたので、季節を忘れずに初夏の頃に咲いてくれました。
祖父はユリの根を好んで食べましたが、食用に供したのは、もっぱらオニユリの方で、ササユリは観賞用として楽しんでいたようです。冬になると、チロチロと燃えるいろり火に当たりながら、掘り出してきたオニユリの鱗茎を、火から少し離れた灰の中に埋めておき、頃合いを見て取り出して、灰を払いながら火の通った外側から一枚ずつはがして食べていました。
祖父は口数が少なく、気むずかしい人でしたが、庭にササユリを絶やさなかったことを思い出すと、そんな祖父もササユリには特別な思いを持っていたのかもしれません。
2019.06.02撮影
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