2019年7月15日月曜日

希少種の保全

機会があって、希少種の多い地域を回りました。希少種と今は言いますが、かつては日本の里山にどこにでもあった植物や身近にいた昆虫です。このような生物は、集落が山林と接する地域で、清らかな水が豊富、人の手で田畑が作られ、水路やあぜ道が整備され、近い山林をが管理される、そのような場所に生育していました。

ところが、高度経済成長期の、湿地干拓、耕地整理、圃場整理、農薬の使用、などによって、これらの生物は次々に姿を消してきました。加えて現在は、少子高齢化が山村地域の過疎化を促進し、耕作放棄、離農、そして山林の荒廃がどんどんと進んでいます。

現在は、そのような土地をやすく買いたたいて、大規模開発し、ゴルフ場やリゾートの開発、自然エネルギーと称してメガソーラー発電所、風力発電所が作られています。今回訪れた場所も、来年には山々が広範に削られ開発されるところと聞きました。

後世に何を残すのか。それが開発後に朽ち果てたリゾート地やメガソーラーの残骸では余りにもさみしいです。できれば、そこから次世代や次々世代が環境と生物の本来あるべき姿を学ぶことのできる、規範となる自然環境を、日本の要所要所に何とか工夫して残せないものでしょうか。

北米先住民の言葉に「我々はこの大地を祖先から受け継いだのではない。我々はこれを我々の子孫から借りているのだ。」("We have not inherited the earth from our parents; we are borrowing it from our children.") というものがあります。もう一度噛みしめたい言葉です。

山からわき水が流れ出ているところでは、モウセンゴケが花穂を伸ばしています。モウセンゴケの花は、「食虫植物」の名前からはおよそ想像できない、清楚な感じの花です。

モウセンゴケの葉です。露のしたたりのような水玉は、昆虫を捕らえる粘液の玉です。

拡大すると、とてもきれいで、誘われるような魅力があります。

別な場所ではハッチョウトンボも生息しています。かつてはこの地域一円50カ所に生息していたそうですが、現在はほんの数カ所になったそうです。オスはほとんど動かず、メスの接近を待つとのこと。この個体もほとんど身じろぎさえしませんでした。メスの方が敏捷に動き回っていました。行動範囲は

コモウセンゴケです。よく見ると赤いつぼみができています。残念ながら開花は確認できませんでした。

ミミカキグサです。これも湿地植物。生育には明るい湿地が必要だそうです。

背後の水中に見えるものが葉です。茎の途中にある捕虫嚢で微少な生物を捕らえ、それを栄養の足しにしているそうです。タヌキモと似ていますので、調べてみると、いずれもタヌキモ科です。黄色い花も共通しています。

観察日にはジャノメチョウが多く飛んでいました。

田んぼの畦にはヤブカンゾウが花期を迎えています。

糸トンボも数多く目にしました。クロイトトンボのようです。

チゴザサです。よくある雑草のようですが、初めて見ました。田んぼの水路脇に生えていました。めしべの柱頭が大きく展開して、ピンクの花びらのように見えます。
2019.07撮影
2019.07.14記述



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