そのあこがれの昆虫に初めて出会ったのは一昨年のことでした。桂川の堤防斜面に生えたエノキの若葉を切り取って丸め、中に卵を産み付けていました。葉脈の維管束を切って葉を萎えさせ、柔らかくしてから丸める巧みさと、その作業を倦まず弛まず数時間あるいは半日余りの時間を費やして行う辛抱強さに感心し、仕事から帰宅すると、夕刻でも駆けつけて観察を続けていました。ヒメコブオトシブミという、体長6ミリほどの、オトシブミの仲間では比較的大きなオトシブミでした。
オトシブミには、作り上げた揺籃を、葉から切り離して地上に落とす種類と、枝に付けたままにする種類があり、後者の方が圧倒的に多いようです。その後エノキを注意して見ると、オトシブミの揺籃がよくついていることに気がつきました。エノキにヒメコブオトシブミ、昨年はエビヅルに同じ仲間のブドウハマキチョッキリ、そのほか今春はコナラにもチョッキリの類が揺籃(おそらくコナライクビチョッキリ)を作っていたのを、確認しています。
このたび土地を良く知った方に西山を案内していただく機会があり、昆虫を中心に半日観察したところ、この周辺にオトシブミの類もかなりいることに気づきました。出現順に掲示します。
ヒメクロオトシブミのようです。近くのエノキの葉で揺籃を作っていました。
ニセアカシアの葉を順に丸めた揺籃がありました。これは初めて見ました。オトシブミの種類は分かりません。ネットで調べるとヒメクロオトシブミのようですが、エノキで作ったものに比べてずいぶん小さいです。
拡大します。きっちり丁寧に作り上げています。
ここでは6つ連続して。
さらに拡大します。
こちらは出来たてです。現場を押さえないと、主犯は分かりません。一昨年のヒメコブオトシブミは1匹で約40個の揺籃を作ったことを考えると、この場所の揺籃の作り手は複数ではなく、一匹のオトシブミの可能性があります。
神社の倒木の下に隠れている虫がいます。お尻隠して角隠さずの状態です。このような「天然物」が多く発生する環境がほしいですね。
こちらは竹林の通路にいたカシルリオトシブミです。3ミリほどの小さな昆虫です。案内の方に指摘されないと全く見落としてしまいます。薄暗がりの中ですので、うまく写せませんでしたが、胸と腹の瑠璃色(構造色)がとてもきれいです。
こちらは往来の激しい道路脇のエノキで揺籃作成中だったヒメコブオトシブミです。こうして葉脈を半ばまで噛み切って、葉が柔らかくなるのを待ちます。主脈や側脈も丁寧に数ミリ間隔で噛んで、葉全体を柔らかくします。
正面からはコブがよく分かります。何のためのコブかは分かりません。
側面から。
同じ枝のエノキの葉です。穴が空いたものは親虫の食痕、穴の空いていないものは、揺籃から出たばかりの羽化直後の成虫によるものと思われます。成虫は揺籃作成中に食事をする場合、作業中の葉を食べてしまうことは決してありません。遠くの葉を選んで食事し、また作業中の葉に戻ってきます。
今回案内していただいて、自然の営みが市街地のすぐそばの身近な場所にあることがよく分かりました。このような昆虫の世界を子どもたちにも伝えてあげたいですね。
2019.07.16撮影
2019.07.16記述
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