Having a dip in the river
故郷の川については以前あるところに書きましたが、何しろ50年ほど前のことですから、今の川とはきれいさが異なり、同じ川として語ることがはばかられます。私の住んでいた下流域の町でも、大川(町中を流れる川は通常こう呼ばれていました)では赤ん坊のおしめの洗濯が禁じられ、水は澄み切ってオイカワ、ウグイ、フナなどが銀鱗をきらめかせ、モクズガニが遡上していました。
川魚漁師はいませんでしたが、川魚を捕るには特に鑑札も必要なく、餌づり、疑似餌づり、投網、ヤス突きなどいろいろな漁法があり、子供なりに見よう見まねで魚を捕ることを覚えました。その中でもっとも簡単かつ確実だったのが、ゴリ類を捕る方法でした。ゴリは白い石を選んで遡上する性質があり、これを利用した漁でした。
捕れるゴリの種類は「エササ」と呼ばれる小さなゴリ(おそらく琵琶湖のイサザに近いものでしょう)と、それより少し大きな「ゴリ」と呼ばれる魚(これはおそらくカワヨシノボリの類、また京都などではヌマチチブと呼ばれる魚の類と思われます)でした。
漁は小型の簗(やな)漁の一種でした。岸に近く、流れがある浅瀬で、ゴリの遡上が認められる場所を選びます、そこに石を集めて流れをせき止める形で幅1.5mほどの堰を作ります。堰は上流に向かって若干開いた「ハの字」形に作り、真ん中にはザルが入るように隙間を作ります。上流からの水は堰に導かれて隙間から勢いをつけて流れるような仕組みです。
次に川底からできるだけ白い石を集めて、隙間からの流れの下に敷き詰めます。白い石は簗に近いところではできるだけ密に敷き詰めるようにします。この隙間の部分にザルを下流に向かって開くように、横合いの堰との間に隙間ができないようにあてがいます。水流で流されないように重しに石を入れておきます。水は堰で集められ、ザルを通って勢いよく下流に向かって白い石の上を流れる、ということになります。
仕掛けができて、静かにしていると、小さなもの大きなもの、ゴリたちが徐々に遡上しはじめ、白い石に導かれて上がってきます。ザルのところまで行き着くと、それ以上進めないので、徐々にザルの中に溜まることになります。頃合いを見計らって、そおっとザルを引き上げます。バケツの中に魚を移します。
一回に何匹捕れたでしょうか、4,5匹のこともあれば、10匹を超えることもあったでしょう。子供は水遊びに夢中で、このような漁は主に川好きなお年寄りの慰みだったように思いますが、これを繰り返し、夏の日が傾く頃には、バケツを覗くと真っ黒になるほどの漁があった日もありました。持ち帰ったゴリは、甘辛く煮付けて佃煮にして食べたようです。
私が桂川のそばに住み始めたのが今から約40年前でしたが、この頃には、故郷の川と同じようにゴリの類の遡上が見られ、試みに同じような仕掛けを作って、ゴリを捕らえた覚えがあります。
その頃と比べると、川の姿(特に水質、ゴミの量)は一変しました。今すぐに、かつてのような生き物の豊かな川を望むことはできませんが、それに近づける努力は不断に行っていきたいと思っています。
写真は桂川の川ヨシノボリ。のぞきめがねを通して撮影。
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