2020年9月25日金曜日

マコモの花

 マコモの花が咲く季節になりました。花期はごく短く、1週間程度。初秋限定の花です。

しかし、花といっても派手さは全くありません。それもそのはず、マコモはイネ科の植物で、単子葉植物にありがちなジミ~な花がチラリと咲くだけです。しかし、なかなか捨てがたい美しさがあるのは事実。実際に、派手な花よりも小さくて地味な花を愛でるのは、控えめと洗練を好む日本人の感性ではないでしょうか。マグノリアよりも侘助、の世界です。

さて、このマコモ、漢字では「真菰」と書きます。古くは「菰」だけでもマコモの意味だったようです。マコモはその葉を採取して編み、筵(むしろ)を作りました。それもまた「菰」と呼ばれました。私の子供の頃、郷里では稲わらで編んだ筵を「こも」と呼んでいました。古の言葉が残っていたのでしょうね。

「菰(こも)」は「お菰(こも)さん」また「虚無」ともあてて、「菰」でできた編み笠をかぶった「虚無僧(こむそう)」などの言葉として、つい最近まで人々は理解できたでしょう。今の若い方がどうかは知りませんが。

マコモの芽に、黒穂菌((くろぼきん))がつくと茎が竹の子状に肥大化し軟化して、これを菰角((こもづの))や「マコモ筍(まこもだけ)」などといい、日本や中国をはじめ東アジアの国々で食用にされます。日本では菰角が熟して黒くなったもの(胞子)を採取して、これを「まこも墨」といって眉墨やお歯黒などに用いたということです。

初秋に花が咲き、実は食用となり、昔は六穀の一つ「菰米(こもべい)」として数えられました。マコモはそれほど古人の日常に関わっていた植物であり、万葉集、古今和歌集などでは「真菰刈る」という言葉は、マコモの多く生えていた地域である「大野川原(おほのかはら)」「淀(よど)」などにかかる枕詞でした。

万葉集には、かなりきわどい内容かと思いますが「真薦刈る(まこもかる) 大野川原の 水隠もりに(みごもりに) 恋ひ来し妹(いも)が 紐解くわれは (巻11-2703)」の歌をはじめとして、「菰」に言及した歌が数多く存します。

*****

前置きが長くなりましたが、写真です。桂川では川岸のあちこちに生えていますが、なかなか開花結実に至りません。

円錐型の花序の株に雄花、上部に雌花が咲きます。

花序の上部には雌性小穂があり、花は淡黄緑色を帯びています。その下に淡紫色の雄性小穂があります。

雌花から白いめしべが覗いています。



雄花からは5本の雄しべが垂れ下がります。



ネットで調べてみると、マコモは漢方薬としての需要が健在で、健康食品としても根強い人気があるようです。一度マコモ筍を食べてみたいものです。

2020.09.23.撮影
2020.09.24.記述













0 件のコメント:

コメントを投稿

イヌコリヤナギ

年初に広沢池で一枝手折ってきたイヌコリヤナギが開花しました。小さくて、ネコヤナギほどは猫っ毛がありませんが、かわいらしい小さな花です。折から今夜は全国的に寒波の襲来で降雪や凍結が予報されています。暖房の効いた部屋の中だけは、一足早く早春の装いです。 ネコヤナギとはしべの色や形も微...