葛の花は大きな葉に隠れて目立ちませんが、円錐状の花序に咲く花は紫、ピンク、黄色などが複雑に混じり合って、とてもきれいです。また香りがとても良い花です。河川敷を歩いていると、細い帯のように香りがたなびくのか、香りが途切れ途切れに届くのも、べっ奥ゆかしい感じがします。
今年は長梅雨で降水量が多く、また梅雨明けから日照が続いたので、葛も大いに繁茂しています。特に花の付き方が例年よりもとても多く、終盤になった現在も数多く咲いています。葛は強雑草として、日本だけでなく、移入された米国でも嫌われ者ですが、古来から日本人の生活に深く結びついています。くず湯、葛きり、くず餅、胡麻豆腐、漢方薬では葛根湯と、料理に使っても、片栗粉と比べると、香りと滑らかさが異なるように感じます。
さて、この葛はマメ科の植物で、これを好む昆虫は多く、オジロアシナガゾウムシなどゾウムシ類、ウラナミシジミやウラギンシジミなどのシジミチョウ類、マメカメムシなどのカメムシの仲間、その他諸々のアリや昆虫、それを捕食する昆虫や鳥達で作り上げる食物連鎖の重要な一部となっています。くず粉を珍重する人間もそのうちの一部かもしれません。
そろそろ終わりになった葛の花にウラギンシジミの幼虫を多数見るようになりました。
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ウラギンシジミ♀の産卵です。雌の羽の表は濃茶色地に薄水色の紋、雄は濃茶色地に朱色の紋を持ちます。羽裏は同様に白く、成虫で越冬する際にこの羽裏が常緑広葉樹の葉の照りに紛れて、絶妙のカモフラージュになります。羽の先端がとがっているのは蝶の仲間では珍しく、これも常緑広葉樹の葉に紛れるための工夫だと考えられています。
1齢か2齢幼虫とおぼしき幼虫がいるのですが、わかりますでしょうか。赤紫色をしています。
ここです。
ここでは終齢幼虫が。体色はくすんだ紫色。しおれた花にそっくりです。
拡大します。
こちらは同じ終齢幼虫ですが、赤紫色。
うんと拡大します。ウラギン花火の火筒が見えます。
こちらも終齢幼虫のようです。赤紫色。
拡大します。
こちらにも。
これだけ見てくると、はは~んと来ますね。どうやらウラギンシジミは、周囲の花の色に合わせて自身の体色を変えているのではないでしょうか。次回保護する機会があれば、背景の色を変えて確認してみたいと思います。
2020.09.23.撮影
2020.09.26.記述
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