2019年10月21日月曜日

観察記録:淀~宮前橋:希少種を訪ねて

淀から宮前橋周辺を自然観察で訪れました。以前から聞いていましたが、この付近は桂川の湿地が保全されいて、水辺の希少種が多いところです。歴史的に見ると、この地は淀川水系の水上交通の要衝でした。ということは、かつては人家と水面との落差がほとんどなかったということです。現在は堤防で守られていますが、洪水になり、いったん堤防が決壊すれば、被害も大きい地帯です。今年(2019年)の台風19号被害をふまえて、国交省が堤防のかさ上げや河川敷の樹木の伐採、ワンドの整備など、勢いづくのではないかと心配します。そうでなくとも、宮前橋は拡張工事の予定があるそうで、この日訪れた場所も今後の保全ができるかどうか分かりません。そのような中での観察となりました。

*****
淀城のお堀に咲くアサザです。対岸の岸辺に2群落見えています。アサザは京都府では絶滅危惧種。

近づいてみると、黄色い花が咲いているのが分かります。アサザは睡蓮などの仲間ではなく、ガガブタ(絶滅寸前種)と同じミツガシワ科の植物です。水質の低下や水辺環境の変化などで、自生地はきわめて少なくなっています。

堀を巡る遊歩道に生えていた、ウマノスズクサです。これは準絶滅危惧種。

これは木の葉ではありません。アカエグリバ。枯れ葉に擬態しています。左が頭です。これは絶滅の心配はありません。余りに見事な擬態ですので、紹介します。

ハキリバチの活動の痕跡です。葛の葉です。もしもクズハキリバチであれば、準絶滅危惧種。

10月の半ば過ぎというのに、この日はツバメがたくさん飛んでいました。中にショウドウツバメやコシアカツバメが混じっています。絶滅危惧種ではありませんが、巣の材料となる泥、稲藁、えさ場となる田圃や草原の減少で、ツバメ類も日本には住みづらくなっています。ショウドウツバメは北海道やシベリアで繁殖し、ベトナムなど東南アジアの国々で越冬します。京都にはちょっと立ち寄るだけ、渡りの途中です。目撃できたのはラッキーでした。

湿地に生えていたサデクサです。矛の先のような細い葉が特徴です。準絶滅危惧種。

増水した水の中から咲いていたタコノアシ。これは絶滅寸前種。

カラムシの葉を丸めて身を隠している、アカタテハの終齢幼虫です。これは面白いので掲載。

少し色づいてきたタコノアシ。秋に真っ赤に紅葉します。それに加えて種のイボイボも紅葉し、全体がゆでだこのようになるので、この名前が付いたそうです。

ウキヤガラ。高架下の厳しい環境に生えていました。準絶滅危惧種。

オグラコウホネ。絶滅寸前種。

マツカサススキ。イネ科の植物ではなく、カヤツリグサ科です。絶滅危惧種。

帰り際にチョウゲンボウやノスリが上空を飛び交っていました。これはノスリで、準絶滅危惧種。チョウゲンボウは絶滅危惧種。

今回は土地を良く知った方々に案内して頂き、珍しい植物を中心に確認することができました。私たちの回りに昔からあった植物や動物が、人々の無関心のもと、いつの間にかいなくなる、そのような事態が起きないように、まずは現実を知ることから始めましょう。

2019.10.20.撮影
2019.10.20.記述




0 件のコメント:

コメントを投稿

平均棍

カやハエなどの「双翅目(ハエ目)」の昆虫には、前翅の付け根に退化した後翅が見えます。多くは先の丸まった棍棒のような形をしており、「平均棍」と呼ばれます。わかりにくい日本語ですが、英語では balancer というので、こちらの方が機能的に理解しやすいです。飛翔時には、前翅の羽ばた...