2020年1月6日月曜日

枯れ野にて:植物の完成形?

植物学者の田中徹氏の著作に、『花の果て、草木の果て: 命をつなぐ植物たち』(淡交社)という写真集があります。花の盛りを過ぎ、実を結び、枯れてゆく植物の写真集です。美しく咲く花をちりばめた他の写真集とは一風異なった、モノトーンの写真が続く異色の写真集です。

最初手に取ったときには若干の違和感がありましたが、植物の生長をたどり、観察を継続するうちに、枯れ果てたと見える植物こそが生命の力を秘めていることに気づき、自分自身も枯れた植物の写真を撮るようになりました。

「種子は植物の完成形である」という言葉を、何の書物だったか、読書か物調べの中で拾い出して覚え、妙に納得しています。植物の種子は条件さえ整っていればきわめて長寿です。大賀ハスは2000年の時を隔てて発芽しました。160年の時を隔てて発芽したソバの種もあります。

その視点でもう一度冬枯れの景色を見てみましょう。一見生命の枯れ果てた草原に見えますが、実はその陰で種が実り、冬芽が準備され、ロゼットが育って、次の季節の準備が整いつつあります。そのような目で、もう一度枯れ野を見直してみると、面白いのではないでしょうか。

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オオブタクサの花序が枯れたまま立っています。細長いのは雄花の花序。

枯れた雌花。この中に大きな種子があります。

これはヌカキビのようです。風に吹かれて種子をこぼしています。

ダキバアレチハナガサはまだ花を咲かせていました。

ジュズダマ。ハトムギと見分けがつきません。

アリタソウ。牛が誤って食べると乳に香りが移り、売り物にならないとか。

こちらはクソニンジン。名前がかわいそうです。よい香りがします。

カゼクサ。茎はとても強いです。

アメリカネナシカズラです。堤防の一面を覆い尽くしています。

手前の茶色が濃い部分がそれです。

これはイタドリ。河原の一部にまだ種をつけていました。翼がある種で風で拡散します。

マメアサガオの種子。多産です。

これ以上枯れるとなかなか同定が難しくなります。が、それはそれで探偵気分で観察ができます。枯れ野に退屈することはありません。

2020.01.04.撮影
2020.01.05.記述


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