イスノキの虫えいがそのまま笛になるのです。虫えいとは、植物の葉や茎や実に虫(アブラムシやタマバエの幼虫など)が入り込み、その部分が太くなったり丸くなったりして変形したもの。植物が虫をその部分に取り込んでそれ以上悪さをしないように身を守るための手立てでもあり、虫にとっては三食昼寝付きの安全な隠れ家の確保にもなり、というものです。どちらが得をしているのか分かりませんが...
このブログでもこれまでいくつかの虫えいを紹介してきました。
ノイバラの虫えい(バラハタマフシ←バラハタマバチ)
アカネの虫えい(アカネツボミフクレフシ←タマバエ)
イスノキはよく虫えいを作る木で、「虫えいならイスノキ」と言われるほど有名だそうです。今回見つけたものは、イスノフシアブラムシという、アブラムシの一種が作る虫えいで、イスノキエダナガタマフシだと思われます。驚くほど大きく(差し渡し約4、5センチ)、かつ側面にポッカリと穴が空いており、中は中空です。イスノキの虫えいにはこのようなものが多く、虫えいに空いた穴に唇を当てて吹くと「ヒョ~、ヒョ~」と鳴る笛になります。このことからイスノキは別名「ヒョンノキ」とも呼ばれます。
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側面にはポッカリと穴が。まだ蓋がついています。
これもそうです。
これが虫えいの中に隠れていたアブラムシです。虫えいの中で育った有翅胎生虫が11月頃アラカシなどに移住、冬を越して春に有翅産性虫が生まれ、これがイスノキに戻って虫えいを作るということです。
よく見えるように白い花に止めてみました。この季節飛び回るワタムシ(雪虫)の同類です。
虫えいの中には、幼虫が出す蝋物質の綿が沢山あります。アブラムシの成虫もいますので、笛として吹くには、よくよく内部を掃除してからにするのが身のためです。音声のサンプルを乗せておきます。2つあって、大きい方が低い音で鳴ります。
こちらが大。
そしてこちらが小。
宮崎駿の「となりのトトロ」で吹いていた土笛「オカリナ」は、実はこの笛だという説もあります。森の精にはその方がふさわしいかも。
2019.11.17.撮影
2019.11.17.記述
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