2019年9月30日月曜日

観察記録:試練を課す親たち:ツマグロヒョウモンの産卵

どうも腑に落ちないということがあるものです。ツマグロヒョウモンの産卵行動です。自宅の前に広がる芝生に所々スミレの株が生えていて、ツマグロヒョウモンが産卵に来るのですが、どう見てもスミレのないところに産み付けているようなので、よく観察してみました。

すると、スミレに産卵することもありますが、5回中4回は他の草、特に芝の葉に産卵しているようです。食草に産卵するのが蝶や蛾の常識と思っていましたが、これが覆りました。

調べてみると、ツマグロヒョウモンはスミレ類のある草地を選んで産卵するのですが、必ずしもスミレに生むわけではないので、幼虫は孵化した後、自らの力で食草までたどり着く必要があるとのことです。

確かにスミレは、パンジーやビオラのような園芸種でなければ、比較的広く薄く芝地などに広がっている場合が多く、先にも書きましたが、ノマド的な生活を送らねばならない幼虫にとっては、スミレを選んで産卵するということは余り意味がないのかもしれません。しかし、孵化しても数ミリの小さな幼虫に、ずいぶん過酷な試練を強いるものだと思います。

あるいは、その試練は、選りすぐれた遺伝子を残すための、この蝶の戦略かもしれません。

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ツマグロヒョウモンのメスです。産卵行動に入っています。ですが、卵を産み付けているのは芝です。

こちらは別の個体。やはり芝やカタバミに産み付けていました。

少し引くとこのような状況です。いったん産卵行動に入ると、結構深い草の中にも入り込み、身の安全には余り頓着しないようです。

産卵後、産み付けたとおぼしきところを探ってみました。

これは、スミレの葉柄に産み付けています。

これは芝の葉に産み付けています。

 こちらも芝の葉に産み付けています。

芝生のあちこちに二齢~終齢期の幼虫がいました。よくこうやって芝の葉に止まっている姿を見かけます。固く直線的な芝の止まり具合が良いのか、あるいは、食草を探しくたびれて、しばしの休息を取っているのか、その問いにはなかなか答えてはくれません。
2019.09.28.撮影
2019.09.29.記述



2019年9月29日日曜日

小さな庭で:ウマノスズクサ:その生命力

ウマノスズクサの生命力については、先般も書きましたが、自宅の小さな庭を観察していても、不思議なほどの増殖力に驚きます。

先日の草刈りから約一ヶ月が経過して、庭にはかなり雑草が生えてきました。その中でもウマノスズクサは他の草に先んじて芽を伸ばし、目立っています。

そこへジャコウアゲハがやってきて産卵したのでしょう、すでに大きいのやら小さいのやら、幼虫が10匹余り確認できました。また卵もかなりあるようで、葉裏に1個2個と見えます。

小さな庭での小さなドラマです。

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庭の様子です。黄色の丸が元々のウマノスズクサ。ジャコウアゲハに食べられて1ヶ月前には切り株状態だったのが、見事に復活しています。赤丸と青丸がウマノスズクサのひこばえ(?)です。地上にも地下にもランナーや地下茎のようなものはないのですが、株が増えています。青丸はもっとも遠くに生えた株。1.2 mほど離れているでしょうか。

これら以外にも、既にジャコウアゲハに食べ尽くされて姿が見えなくなったものが2,3株あります。すさまじい生命力です。「準絶滅危惧種」に指定されたのは、これがジャコウアゲハの実質上唯一の食草だからですが、植物そのものとしては、強靱であると思えます。

左端の株です。10本ほどがまとめて生えています。

青丸の株です。これはおとなしく1本のみ。

あちこちで幼虫が育っていますので、おおもとの株にすべて移しておきました。

今日は日が良かったのか、脱皮している個体が多かったです。これは葉裏で。

 これも葉裏で。

 これは葉表で。

軸をかじっていた個体です。触ると黄色い臭角を出しますが、短いのでとても可愛らしく見えます。「さわっちゃだめ~~!」と言っているようです。
2019.09.28.撮影
2019.09.28.記述




2019年9月28日土曜日

観察記録:秋の草花:嵐山から松尾橋まで

しばらくぶりに河川敷の草花を観察すると、すっかり秋が深まっているのを感じます。いくつかご紹介。

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ガガイモの実が十分に実ってきました。先般はアブラムシにたかられていた実も無事なようです。ガガイモの「ガガ」は鏡のこと。この実のサヤがはじけるとサヤの裏側が鏡のように光っていることから付いたとのいわれも。

今年は盛りの遅い彼岸花。咲きそろっています。

ほんの数日間の命です。

こちらはキンエノコロ。午後の光に浮き上がります。

待ちに待ったアカネが満開でした。かつてはこの根から取った染料で、布を染めたとか。あの茜色に染める植物です。

花弁は5枚。

この花のおしべは茶色ですが...

開いたばかりのこの花のおしべは黄色。これが本来の色ですね。

余り注目されませんが、イノコズチの花は結構きれいです。あの小さくてやっかいなひっつき虫。

この枯れ葉を見て大喜びする人は、かなりの虫マニア。アケビコノハの蛹室(繭)です。

池の畔ではマコモが咲いていました。水辺あるいは水中に育つイネ科の植物です。その地下茎は、ガンやコハクチョウなどの冬場の重要な食草です。

黄色いのが雄しべです。

先端からは雌しべがたくさん顔を出していました。雌性先熟の植物のようです。

拡大します。風媒花らしく、花粉を空中で捕らえることのできる形をしています。
2019.09.26.撮影
2019.09.27.記述


2019年9月27日金曜日

観察記録:セスジスズメの行進

夏の間に成長した芋虫たちが蛹になる季節が来ました。これまでの場所に何が不満なのか、道路を横切って新天地へと向かう姿をしばしば見かけます。今朝は堤防道路をセスジスズメの幼虫が横切るのに出くわし、交通(といってもバイク一台ですが)を遮断して、無事に横断するのを見届けました。動画も撮りましたので、ポストしておきます。

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丸々と太ったセスジスズメの終齢幼虫です。蛹になる場所を求めて移動しています。この行動で動く距離は、場合によっては相当なものになるようです。

動画を掲示します。注目すべきはおしりのとんがりで、これがピコンピコンと歩くたびごとに揺れるのがとても可愛いです。

道路で見かけたときには、いじめないで、やさしく横断を見守ってやってください。成虫は素晴らしい飛翔能力を持ったスズメガです。

2019.09.26.撮影
2019.09.26.記述


2019年9月26日木曜日

観察記録:桜並木:ウスバカゲロウ?:ホシホウジャクの産卵

夕刻に桜並木を散策しました。いろいろと用事が続いたので久しぶりです。草花がすっかり秋模様になっていて、驚きました。今日の収穫は、スズメウリ、ホシホウジャク、ウスバカゲロウです。

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スズメウリは、野生のウリの仲間です。カラスウリよりも小さい実をならすことから、スズメウリの名がつきました。ちょっとグースベリーに似ていますが、熟れると赤くなります。白い縞の入った赤い実はとても可愛らしいです。最近数を減らしていたので、発見できたのは嬉しいです。

 花は5弁花。アリが吸蜜に来ています。

上記の花の拡大です。小さなアリたちにとっては重要な蜜源なのでしょうね。

実が膨らみ始めていました。

かなり膨らんだものもあります。

ツルボの群生がありました。昨年からあったのでしょうが、これには今日になるまで気づきませんでした。

マツカゼソウです。

アレチヌスビトハギ。在来種のヌスビトハギよりも花は大きくてきれいですが、実るといわゆる「ひっつき虫」になり、たちが悪いです。

キツネノマゴ。背の低い雑草ですが、 よく見ると花はなかなか捨てがたい美しさがあります。

トンボかと思ったのですが、どうもウスバカゲロウの仲間のようです。

イチモンジセセリ。

これは今日のスクープ。ホシホウジャクの卵です。花も咲いていないのに草原を飛び回っていると思ったら、産卵行動の最中でした。卵はオオスカシバのものと色も形もよく似ています。

拡大します。

側面です。

ホシホウジャクの食草はヘクソカズラですので、簡単に手に入ります。幼虫を見たことがないので、飼育してみようと思い。家に持ち帰りました。

2019.09.25.撮影
2019.09.25.記述




2019年9月25日水曜日

観察記録:アカハライモリのこと

この動物にもやっと会えた、という気持です。水族館の訪問の際に、日本の清流を特集したコーナーで、アカハライモリに出会うことができました。

ある機関誌のために、イモリの恋の話を書いたのですが、肝心のイモリの写真がなかなか撮れなくて困っていました。今回のものも薄暗がりの中で撮ったので、余り良い出来ではありませんが、まあ使えるでしょう。

ちなみに、古来日本ではイモリは相思相愛の情が深い動物と信じられていました。可愛そうな話ですが、かつては竹筒に節を隔ててオスとメスのイモリを封じ込め、相手への思いが高ぶったところで、これを黒焼きにし、それを粉にして、意中の異性に密かに服用させる惚れ薬として用いられたことが知られています。

アカハライモリはまた、体の一部を失っても再生する能力にきわめて優れていて、手足はもちろんのこと、心臓の一部を失っても再生するということで、現在再生医療の見地からいろいろと研究されています。

そのような不思議な能力を秘めた動物であると知った上で眺めると、何やら腹の赤色の毒々しささえ神秘的に見えてくるような気がします。

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正面から見ると、ちょっと可愛い。

水中をゆったりと自在に泳ぎます。
2019.09.23.撮影
2019.09.24.記述



平均棍

カやハエなどの「双翅目(ハエ目)」の昆虫には、前翅の付け根に退化した後翅が見えます。多くは先の丸まった棍棒のような形をしており、「平均棍」と呼ばれます。わかりにくい日本語ですが、英語では balancer というので、こちらの方が機能的に理解しやすいです。飛翔時には、前翅の羽ばた...